きっかけ
例によって、高坂教授の名言を発掘するために再読しました。
どんな本?
一般には、高坂教授の博士論文として知られています。ナポレオン戦争後の西ヨーロッパに秩序をもたらした「ウィーン体制」を分析した論文です。
今回は、「あとがき」を私なりに要約してみました。これが本書から学び得る見識だと私は考えます。
- この書物の意図するところは、ヨーロッパの外交がなにであったかを考察することにある。一言でいえばそれは「古典外交」である。その行動原則を現代に持って来ても、ほとんど役に立たない。それにもかかわらず、「古典外交」はわれわれと無縁のものではない。
- なぜなら、「古典外交」は次の二つを示しているからである。一つは、優れた外政家は諦念と誠意を兼ね備えているということ。そして、古典外交の精髄は、「開かれた国益」に基づき、一歩離れてつき合うということである。
- 両者を共に理解するとき、われわれは深い叡知と貴重な示唆を得ることができる。
メモ
- 人間の行為は歴史的に見て、まったく同じことがくり返されることはないが、逆に、まったく新しいこともない。
- 自らの主張に生ずる限界を見きわめること、逆に言えば、他国との協力の可能性を追求し、これまた限界を越えないことが、外交の基本的課題
- 外交のなしうることには明らかな限度があるのだし、それを認識したほうがよいのである。
- 近代ヨーロッパの外交の精髄は、自己主張と自制、協力と自律性といったものの間のバランスの感覚であったし、それが与える外交の限界の認識であった。あるいは、外交は一歩離れて(at arm's length)の関係でなくてはならぬという智恵だと言ってもよい。