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古典外交の成熟と崩壊Ⅱ

 

古典外交の成熟と崩壊II (中公クラシックス)

古典外交の成熟と崩壊II (中公クラシックス)

  • 作者:高坂 正堯
  • 発売日: 2012/12/07
  • メディア: 単行本
 

きっかけ

例によって、高坂教授の名言を発掘するために再読しました。

どんな本?

一般には、高坂教授の博士論文として知られています。ナポレオン戦争後の西ヨーロッパに秩序をもたらした「ウィーン体制」を分析した論文です。

今回は、「あとがき」を私なりに要約してみました。これが本書から学び得る見識だと私は考えます。

  • この書物の意図するところは、ヨーロッパの外交がなにであったかを考察することにある。一言でいえばそれは「古典外交」である。その行動原則を現代に持って来ても、ほとんど役に立たない。それにもかかわらず、「古典外交」はわれわれと無縁のものではない
  • なぜなら、「古典外交」は次の二つを示しているからである。一つは、優れた外政家は諦念と誠意を兼ね備えているということ。そして、古典外交の精髄は、「開かれた国益」に基づき、一歩離れてつき合うということである。
  • 両者を共に理解するとき、われわれは深い叡知と貴重な示唆を得ることができる。

メモ

  • 人間の行為は歴史的に見て、まったく同じことがくり返されることはないが、逆に、まったく新しいこともない。
  • 自らの主張に生ずる限界を見きわめること、逆に言えば、他国との協力の可能性を追求し、これまた限界を越えないことが、外交の基本的課題
  • 外交のなしうることには明らかな限度があるのだし、それを認識したほうがよいのである。
  • 近代ヨーロッパの外交の精髄は、自己主張と自制、協力と自律性といったものの間のバランスの感覚であったし、それが与える外交の限界の認識であった。あるいは、外交は一歩離れて(at arm's length)の関係でなくてはならぬという智恵だと言ってもよい。