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モスクが語るイスラム史

 

きっかけ

興亡の世界史06に物足りなさを感じた私は、イスラームについての手軽な入門書を探しました。古くてもいいから、最後まで読める本というのが条件です。たくさんの本が候補に上がってくる中で、羽田正氏の書く文章に信頼を感じていた私は、1991年に出版され、中古価格が1円になっていた本書を読むことにしました。

どんな本?

  • モスクの歴史、具体的には建物としてのモスクの様式の変化およびモスクが果たしてきた社会的機能の変遷を論じています。

感想

  • 図と写真が計122枚も使われています。私はイスラーム圏に旅行したこともなければ、モスクに入ったこともなく、モスクやモスクのある風景に馴染みがありませんので、この豊富な図と写真は私の理解を大いに助けてくれました。見れば見るほど、キリスト教会とはまた趣の異なる、人々を包み込むような威容に魅入られます。
  • しかし、話が本格的なモスク史になると、だんだん読むのが辛くなってきます。理由は、馴染みのないカタカナが頻出するためです。これは歴史を学ぶ上では避けて通れない壁ではありますが、聞いたこともないような固有名詞が次から次へと目に飛び込んでくると、私の貧弱な頭では思考停止に陥ります。著者の文章力は確かなので、これは明らかに私個人の責任です。
  • ただ、モスク史を眺めて得られた結論が「大モスクの建設や建築様式は、政治権力の推移と大きな関わりを持っていた」というのは、ちょっと物足りないと感じました。そりゃ、デカい建物を造るには時間も金もかかるんだから、権力者の盛衰と関係あるだろと言いたくなりますが、そういうものではないのかな?

メモ

  • モスクにはミフラーブと呼ばれる窪みがある。ミフラーブは、モスクの礼拝堂内部の壁のうち、メッカの方向の壁に作られる。これがなければモスクとはいえない。
  • 大モスクの建設や建築様式は、政治権力の推移と大きな関わりを持っていた。一方、キリスト教の大聖堂は、宗教の力を象徴するものではあっても、王権の強大さを象徴するものではなかった。ここに、政治と宗教が結びついたイスラームの特徴を見出すことができる。
  • 異教徒の活用イスラーム社会の一般的特徴としてしばしば指摘されるが、政治・軍事の側面だけでなく、モスク建築のような文化的側面でもこの原則は生きていた。しかし、ひとつ決定的な違いが存在した。18世紀以前は征服した地域の文化を余裕を持って導入したのに対し、それ以降は「先進地域」の文化を一種の憧れを持って受け入れたという点である。
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