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パレスチナ

 

パレスチナ新版 (岩波新書)

パレスチナ新版 (岩波新書)

  • 作者:広河 隆一
  • 発売日: 2002/05/20
  • メディア: 新書
 

きっかけ

例によって、段ボールの中から引っ張り出してきた本です。これもおそらく、イラク戦争を目の当たりにした当時大学3回生の私が、「中東のことを勉強しなくっちゃ!」と意気込んで買ったものの、たいして読みもせずに積読に至ったのでしょう。

著者は?

  • 広河隆一
  • 1943年中国・天津市生まれ。1967年早稲田大学教育学部卒業。同年イスラエルに渡り、70年に帰国。中東諸国と核問題を中心にフォト・ジャーナリストとして取材を続ける。
  • 2018年12月、週刊文春は、広河が複数の女性に性行為などを強要した疑いがあると報じた。2019年12月、デイズジャパンは、広河がデイズジャパンを経営した全期間にわたり、性交の強要や裸の写真撮影、激しい叱責が多数あったとする、有識者による検証委員会の報告書を公表し、広河による性被害やセクハラ、パワハラを認定した。

どんな本?

まさに泥沼ともいうべき、流血の対立の渦中にあるパレスチナイスラエル。だが、ここに至る関係の歴史を正確に知る人は、意外に少ないのではないか。60年代後半からこの問題を追い続けてきた著者が、旧版以降の流れを新たに加筆、現地取材にもとづく最新の状況にもふれて、一冊で今日までの歴史と背景を辿れる新版として刊行する。

感想

  • 文字面を追うだけでも、胃をぎゅっと握り潰されるような感覚に陥って、顔をしかめてしまいます。虐殺、全滅、再報復、強姦、処刑、破壊、没収、爆破、瓦礫…。ほとんど最初から最後まで、このような言葉が並びます。それがパレスチナの歴史なのだと理解した時、私は人間の残酷さにぞっとしました。
  • イスラエルが建国されてから約70年。この間に、パレスチナ問題が原因でいったいどれだけの死傷者が出たのでしょうか。何十万、何百万と客観的な数字で示されるその一つ一つの裏には、わが子を思いながら死んでいったお父さんお母さんや、恐怖と激痛に苦しみ泣きながら死んだ子ども、子どもを失って自分も死んでしまいたいほどの悲しみに打ちのめされた親など、それぞれの悲劇があったのだろうと想像して、私も胸が痛みました。
  • そんな中で、P. 197に掲載された写真の、純真無垢な子どもたちの笑顔がとても素敵で、これが本書の唯一の救い、癒しです。