きっかけ
レベルファイブが500円セールを実施したのが購入のきっかけです。
感想
このジャンルには、街と428という大変に有名な超名作が存在します。私も、プレイステーションとプレイステーションポータブルでそれぞれプレイし、それこそ時間を忘れて没頭しました。そしてどちらも私の生涯ベストテンに入るレベルの面白さでした。前者は深みのあるテキストに好奇心と知識欲をそそられ、後者は意外すぎるストーリー展開に「えーーっ！！」とPSPの画面に向かって大声を上げたの今でもよく覚えています。
本作も、その超名作と同じシステムで作られています。そのため、どうしても街と428との比較になってしまいます。元のハードルが異様に高いため、かなり厳しい評価とならざるを得ません。
なんとかいいところを見つけて褒めてあげたいのですが、非常に辛口なレビューになってしまいました。
- テキスト量が非常に少ないので、読み物として物足りません。サウンドノベルの魅力の一つは、一見蛇足に思える説明や登場人物が実は繋がっていて、本編に加えて楽しめることにあります。そういう遊びが、街や428の裏の魅力でした。しかし本作は、ストーリー展開に必要な最低限のテキストしかありません。テンポがいいといえなくもないですが、前2作に比べると、明らかに量が不足しています。
- 登場人物の表情が乏しく、感情移入が難しいです。実写でない分、表情を大げさに動かすこともできたはず。にもかかわらず、いつも似たような表情を見せられるので、退屈さが先行してしまって物語に没入できません。特に、ルサンチ☆マンの真顔と女子アナの虚ろな表情が私には生理的にかなり無理でした。声優さんはいい仕事をしているだけに、もったいないです。
- 上記も含め、全体的にグラフィックの品質が低いです。特に私が残念に感じたのは、東京の街並み。街や428のプレイヤーには、ゲーム画面を通じて東京の街並みを知り東京に憧れた、私のようなうぶな地方民もいたことでしょう。本物の東京は、もっとごちゃっとして、人も多いだろうに、これではまるで岐阜あたりの地方都市です。
- と、ここまでかなり酷評してしまいました。正直、中盤あたりは結末が読めてしまったような気もして、途中で投げようかとも思いました。が、それはもったいないという気持ちも生まれ、期待と諦めとが半々という心境でプレイを再開しました。
- ところが、終盤である19時台に突入したところからは一気でした。夜中の午前1時にゲームを始め、いかんいかん明日も仕事だぞ早く寝なくちゃ、と思いながらもつい展開が気になってしまって。最後の最後で、私はついに本作にのめり込んだのです。
- 「こっちを選んだら死んじゃった、じゃあもう一つの選択肢でやり直して…え、こっちはこっちでこの人が死んじゃうの！？じゃあ、別の人のストーリーを進めればいいのか？どこからやり直せばいいんだろう！？」と、街や428と同様の「正解が見つからない混乱と、探し当てたときの快感」を得られたのが良かったのだと思います。
- 5人のタイムトラベラーは当然全員生存するのかと思いきや、次々に命を落とすこととなり、私は心を揺さぶられました。いつの間にか、彼らに親しみを覚えていたようです。
- タイムトラベルものは面白いのですが、どうやっても話が複雑化し、頭がこんがらがるのが難点です。
- 私は最後の選択で同じ時間を繰り返さないほうを選んだつもりです。それぞれのタイムトラベラーが、新たな人生を歩んでいるらしいムービーには感動を覚えました。
- TIPSには最後までおまけ要素がありません。それどころか、終盤は読んでも意味不明な物理（？）の解説のオンパレードです。制作者の独りよがりな自己満足のように思え、イライラしました。
- Playing Cinema Eventは、テキストをただ読むだけの作業になりがちなところに緊張感を与えています。
