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東南アジアを知るための50章

 

東南アジアを知るための50章 (エリア・スタディーズ)

東南アジアを知るための50章 (エリア・スタディーズ)

  • 発売日: 2014/04/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

感想

  • 多様な観点で短い章立てになっているので、興味を引く内容だけさくっと読める手軽さがすごく良いです。
  • 執筆者は東京外大の先生たちで、学生向けの講義をベースにしているとのこと。安心感がありますし、学生さんがうらやましい。

メモ

  • 東南アジアがひとまとまりの政治的単位として登場したのは、1943年にインド総督がSouth-East Asia Commandを創設したときのことである。
  • 中国とインドに挟まれたこの地域では、交易が歴史の大きな原動力になっている。
  • 南シナ海とインド洋とを結ぶ海のシルクロードに、交易の中継地点が発生した。ここに権力が集中した結果、初期国家が発展した。(例・扶南、林邑)
  • 他方、海のシルクロードから遠いフィリピンでは、強力な権力の集中は起こらなかった。
  • 前漢武帝ベトナム北部を征服し、以降基本的に中国の支配下にあって、中国の影響を強く受け続けた。
  • 1802年阮朝ベトナム全土を支配して、首都を中部のフエに置き、清から越南の国号を認められた。
  • 初期国家は、インド文化を積極的に取り入れた。権力者は石造寺院を建立し、インド系文字を使用し、サンスクリット語から大量の借用語が現地後に流入した。
  • 7世紀、スマトラ島に拠点を置いたシュリーヴィジャヤはマラッカ海峡の都市として、扶南に替わって新しい海上交易の拠点となった。
  • ジャワ島では、シャイレーンドラ朝が繁栄し、ボロブドゥール仏教寺院を建立した。
  • 東南アジアでは、中国化したベトナム北部とフィリピンを除く広範囲でインド化が展開した。その後、上座仏教化やイスラーム化を経験したのちも、現代に残る影響を残した。
  • 国民国家の時代の考古学は、想像された共同体の感情を共有する国民に、将来の指針を提示する。
  • 西欧宗主国が植民地の他者の過去を自らのものにしていく知的行為は、発明的行為であり、帝国主義的支配の正当化のレトリックとしても作用する。
  • 大量のサンスクリット語彙の流入は、東南アジアの広範囲な地域に共通の古典文化を形成した。
  • インド化の時代を学ぶことは、東南アジアの文化の共通言語を探ることでもある。
  • 東南アジアは地域としての統合を強めているが、各国の政治体制や民主化のあり方はきわめて多様である。
  • 個人支配体制から民主主義体制への移行を経験した国:フィリピン、インドネシア
  • 軍事支配体制から民主化した国:タイ、ミャンマー
  • 国際社会の介入を通じた停戦と民主化カンボジア東ティモール
  • 競争的権威主義体制:マレーシア、シンガポール
  • 社会主義一党支配体制:ベトナムラオス
  • 個人支配体制:ブルネイ
  • アセアンは、反共のための同盟ではなく、周辺地域からの脅威を低下させ、国内統治や経済問題に集中するための善隣友好の手段であった。