本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

バスの屋根から世界が見える

 

本の紹介

世界中の過酷なバス乗車経験談ばかり、日記風の読みもの計17本が楽しめる。

心を動かされたこと

読みながら、こっちまで身体が痛くなってくる。例えば、足がむくむのは、自分も欧州との長距離フライトで経験している。ちなみに最近は、たまに出社して座っているだけで足がむくんで痛い。それをこの著者は20時間、30時間とバスに揺られて耐え忍ぶのである。足が壊死するのではと想像してゾッとする。でも、読書なのであくまで本の上の話。だから、笑って読める。エアコンの下、気持ちいい布団の上で足を思いっきり伸ばして、ろくでもないバス旅を笑う。このギャップがたまらない。我ながら嫌な性格である。

読んでいるうちに、調べたくなる。YouTubeで"worst bus"と検索したら、それらしい動画がヒットした。暴走族よろしく、クラクションを盛大に鳴らしまくり、アクセル全開で前車を追い抜きにかかるもの。レースゲームでも味わえない臨場感である。乗客はさぞ生きた心地がしないだろうと思いきや、撮影者以外はぐっすり昼寝しているのがおかしい。アフリカの野生の牛よろしく、崖から半分くらい車体を転落させながら高所を通過したり、濁流に勢いよく突っ込んで強行突破を図るものもある。バスを何だと思っているのか。

そんなスリリングなバスの旅。自分も真似したい、と思うわけない。絶対に御免である。でもそれは39歳の今だから思うこと。20年前の自分だったら、妙な気を起こしていたかもしれない。実際、名古屋を出発する高速バス路線を検索し、座席の配置などを調べている自分がいる。そういえば、学生時代は京都と実家との往復に、名神ハイウェイバスをよく利用した。順調に行けば2時間半ほどの道のり。もちろん、本書に登場するひどいバスとは全く別物の、清潔で快適で安全なバスである。GBCドラクエ3を楽しみつつ、気がついたら二人分のシートに横になって昼寝していて、ふと起きたら京都南インター、といった具合だ。京都から東京へ行くのにも、夜行バスを利用したことがあった。大して眠れもしないのに、到着してすぐから大はしゃぎで電車に乗って目的地へ向かい、朝からカラオケルームで遊んでいた。やはり昔の自分は年相応に活力があったのだ。そんなことを自然と思い出した。学生時代は結構バスと縁があったのである。

とはいえ、今の自分に過酷なバス旅は真似できないし、並みの人は真似してはいけないレベル。本書を読み終えた今、私はそれを疑似体験、追体験し、旅行に行って帰ってきたような気分である。つまりどっと疲れている。

やはりバスの長旅は本とYouTubeで済ませるに限る。まずは、日本最長路線バスの旅を仮想体験しよう。