本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

イスラームの構造

 

※今回読んだのは、2004年10月30日発行の初版

購入動機は、読みたかったから…ではなく、たまたまバリューブックスで安かったから。著者のことは、どこかで名前を見かけたことがあるかなという程度で全く知らなかったし、イスラーム思想にも興味がなかったので、つまんなかったらまぁそれでいいや、と割り切って読み始めた。タウヒードという言葉自体、見たことも聞いたこともなかった。

第一印象は悪かった。冒頭、世の人がイスラームを誤解しているのをくさすような、人を小馬鹿にしたような表現に感じ、なんだこの高慢な態度は、なんで上から目線で説教されないかんのだと気に障ったのだ。私の経験上、こういう本は得てして著者の主張が強すぎ、本編に入る前の最初の数ページでお腹いっぱいになってしまうものである。この時点で読むのはやめようか…とも考えた。考えたが、やっぱり読んでみようと思った。理由はよくわからない。

はじめのうちは、なんだか小難しいことを言っているなぁという感じ。このままでは迷子になってしまうので、とりあえずキーワードらしきものだけを追いかけることにした。これが奏功した。どうやら著者は、①タウヒード、②シャリーア、③ウンマ、この3つを知ることがイスラームの理解に必要不可欠と主張しているようだ。これで読書の見通しが立った。この3つの中で馴染みがないのは①タウヒード。だからこれの理解にまずは集中すればよいというわけだ。

タウヒードとは、神の唯一性を意味する言葉。万物は同じ神によってつくられたゆえ、すべて等位にあり、一つ一つに差異があり、一つとして他と関わりを持たぬものはないとの考え。

難解な概念ではある。が、目からウロコでもある。イスラームとは神に絶対服従するという意味であるとの説明の文字面だけ受け取ると、自分を犠牲にして身も心も神に捧げよということかと解釈してしまう。しかし、そうてはないのだ。タウヒードを正しく解釈すると、むしろ一人ひとりを大切にせよ、個人の尊厳を守りなさい、という意味になるのだ。

これがわかっただけでも、私は本書を読んだ甲斐があった。食わず嫌いしなくてよかった。