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歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

肉食の思想

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92))

肉食の思想―ヨーロッパ精神の再発見 (中公新書 (92))

どんな本?

「次はどうなるんだろう?」
「ああそうか!」
実体験→疑問→仮説→調査検証→結論が本の中で展開され、まるで小学生の優れた自由研究を追体験しているかのようなわくわく感を覚えます。ヨーロッパの食生活がヨーロッパの思想にどう働きかけたのか?著者と読者が一体となって歴史を辿るうちに、謎が一つ一つ解き明かされていく、目からウロコのユニークな読み物です。
単に古い書籍を読み解くだけでなく、著者自らの見聞によって大胆に意見を広げる点に、勢いと迫力を感じます。

どんな人向け?

世界史(西洋史)が好きな人

著者は?

1926年生まれ。1952年、京都大学文学部史学科卒、京都府立医科大学教授を経て、同大学名誉教授。専攻、西洋中世史、比較史。2001年10月、逝去。

メモ

  • ヨーロッパの気候は牧畜に適しているが、穀物栽培には適していない。穀物だけで満腹になれないヨーロッパ人は、身近な家畜を屠殺して食料とせざるを得なかった。ヨーロッパ人の肉食率が高いのはこのためであり、ぜいたくだったわけではない。
  • キリスト教が人間の結婚に厳しい親等制限を課したのは、身近に暮らす家畜の近親相姦や血族相姦に対する強い嫌悪感の反映である。
  • このような高い肉食率とキリスト教の思想から、ヨーロッパでは強烈な人間中心主義(人間と他の動物とを区別し、一段高くみる考え方)が醸成された。なお、ここでいう人間は、キリスト教徒かつヨーロッパ人のみを指していた。

私見・疑問等

  • 終盤は怒涛の勢いで持論が展開されます。人によってはこれを「強引」と感じるかもしれません。
  • 私は著者の勢いにのまれかけ、途中から結論を求めて飛ばし読みをするようになりました。結果として、やや消化不良なまま本を読み終えました。
  • この本が出版されて50年が経過し、日本人の食生活の洋食化はいっそう進みました。著者は残念ながら2001年に亡くなりましたが、21世紀の状況を見たらどのように論ずるのでしょうか?