どんな本?
合計20人の執筆者による、386ページに及ぶ西洋政治思想の本格的な教科書です。近年の大きくて見やすい段組みに慣れた私たちの感覚からすると、注で用いられるほどの小さな文字でびっしり埋まったテキストは、良い意味で新鮮。
「本書を手掛かりに、より深い政治思想・理論の研究へと読者を誘う」ことがねらいであると、「はしがき」で編者は語っています。一つ一つの政治思想とじっくり向き合うもよし、読み物として楽しむもよし、辞書代わりに使うもよし、政治学を学ぶ人の本棚に常に置いておきたい一冊です。
どんな人向け?
- 政治とは何かを考えたい人
- 政治学関連の学部学科・大学院で学ぶ学生
著者は?
中谷猛
渡邉雅弘
柴田平三郎
菊池理夫
友岡敏明
山本周次
谷川昌幸
関口正司
重森臣広
筏津安恕
大藪龍介
大矢吉之
寺島俊穂
森脇俊雅
飯田文雄
石田徹
足立幸男
Good point
- 序章「人生にとっての政治の意味」が秀逸。この手の教科書では思想家とその思想の解説の連続になりがちですが、著者からの温かいメッセージが、読者にとって良い導入になっています。
- 時代区分ごとに概要がまとめられており、理解の助けになります。
メモ(序章 人生にとっての政治の意味)
- 人間は、共同生活が不可欠な存在である。その領域において生じる公共的な事柄を処理するために、公権力=政治が必要となる。
- 権力は、
個人の行動を統制する
上下の従属関係を作り出す
新しい秩序を生み出す創造力も持っている
- 政治の世界は一つの擬制だという醒めた意識が、政治という制度への過度な進行を食い止める。
- 政治の営みの核心は、政治社会での公共的関心事の解決と、共通の幸福の追求である。
メモ(I 知的遺産の発見:概説)
- ローマ文化は、ギリシャ文化の継承ではなく、ヘレニズム文明の洗礼のもとに成立した。
- ローマによるギリシャの知的遺産の再発見が、西欧文明の発酵母胎となった。
- 近代西欧は、アラビア・ビザンツの先進異文化圏からの刺戟と吸収を通して、ギリシャ・ローマ文化を再発見し継承した。
- ギリシャは、殺戮、破壊、犠牲、残酷、虐殺、処刑、恐怖、悪夢から、芸術の輝き、自由、神話、哲学、民主主義を生み出した。
- 奴隷制が民主主義を可能にした。
- ギリシャの政治思想は、現実に対する批判的省察の所産である。
私見・疑問等
執筆者が十数人いるため、文章の読みやすさや魅力にばらつきがあります。中には難解な言い回しを多用したとっつきにくい章もありました。