本・ゲ・旅

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変わるイスラーム

 

分厚い本を読んでみたくて購入した。著者はイラン出身の学者さん。1972年生まれなので、私とは一回り違うのだが、これだけの分量を30そこそこで書き上げる情熱は、本当に凄い。また、これを日本語に翻訳したのは、『イスラームの二千年』に続いて白須英子氏。自分のつたない英語力では、まえがきすら読みきれずにあわれ脱落すること間違いなしだ。これまで翻訳ものは、いまいち日本語がこなれていないという先入観があって逃げていたが、氏の翻訳は英語らしさも残しつつ読みやすい日本語。ベテランによる翻訳のありがたみも実感した。なお、ウィキペディアによると、87歳の大御所のようだ。今後も氏の書籍は安心して手にとってみたい。

さて著者は、現在のイスラームキリスト教宗教改革に相当する変化の真っ只中にいると説く。宗教改革イスラーム世界でたびたび多くの血が流れるのは、19世紀以降の西欧列強による世界分割とその後のネイション・ステイトの形成が原因、との定説に親しんでいた私には大きな衝撃。思考のスケールが壮大だ。ただ、宗教改革キリスト教内部の戦いであるのに対し、過去百年のイスラームの歴史は、イスラーム内部の対立と言えるのか。まだ腹落ちしていない。

著者はクルアーンの記述やイスラームの歴史に立ち戻りながら、現代イスラーム世界の変化と課題を説明する。が、解説が少し冗長だなと感じるのは、私にその知識が無く、また私が知りたいのは現代イスラーム世界の変化と課題のほうだからか。

第10章で著者は、20世紀以降に誕生した多くのイスラーム的民主国家を理想に満たないものとして一蹴する。そして、宗教的多元主義と人権尊重に基づくイスラーム的民主国創設を説く。その説得力と情熱は、学者というより宗教家の如くだ。

【余談】ここ2年ほど、なぜ私が飽きずに懲りずにイスラームの歴史や文化に関する書籍を求め続けているのか。考えてみたが、よくわからなかった。わからないけど、とにかくイスラームが好きでハマっている。