本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

「アラブの心臓」に何が起きているのか

 

これまで、イスラームそのもの、あるいは中東、中央アジアの歴史の書籍を読み込んできた。もちろんまだ読みたい本は沢山ある。が、ふと現代にも興味が湧いた。これまでに蓄積した知識で、イラク戦争やISなどの現代史をどれくらい理解できるか、自分を試したくなったのである。

本作は一気に時代が飛んで、21世紀の歴史の本である。具体的には、エジプト、シリア、イラクレバノン、ヨルダン、パレスチナの6カ国の政治を概説する。

感想

まず最初に、私の基礎知識不足を痛感した。なにしろ本書で取り上げられる事実・事象・人物をほとんど知らないのだ。例えば、ナセル、サダトフセイン、アサドなどは一般常識レベルの指導者だが、私はそれぞれがどの国の人かもあやしい。それどころか、初めて聞いたわ、という人名のほうがはるかに多い。「アラブの春」は2011年の出来事だが、私は東日本大震災の衝撃と名古屋グランパスの優勝争いに気を取られて、中東情勢にはまったく無関心だった。イチから、いやゼロから勉強が必要である。

意外だったのは、ジャーナリズム、ルポルタージュ的な要素を排除した、れっきとした学術論文で構成されている点。しかし、論文とは言ってもそこに堅苦しさはなく、むしろ私でもついていけるほど簡潔かつ明快な論旨で、しかも週刊誌的な単純化はみられない。私は信頼を置いて本書を読むことができた。

とにかく、知らないことだらけ。おかげで、毎日の読書が未知の分野を学ぶ喜びに溢れている。これは誇張ではない。なにしろ、ゲーム好きの私がここ数週間Nintendo Switchに触っていないのだ。ポケモンSVに目もくれず読書。異常である。