本書は、「アラブの春」の分析の先に見えてくる現代アラブ社会の構造的な特徴を指摘することを目的としています。
私が慣れ親しんでいる政治史・国際政治史とは、若干趣が異なります。それは、エジプト国内経済とエジプト国民に対する意識調査の2つから論を導いているからです。言い換えれば、データに基づく政治分析です。私には新鮮な観点ではあります。が、読解するのはなかなか難しいです。
もっとも、それらの分析から導かれた結論が、国民の間で政治安定志向がますます高まっている、「民主化」の過程で選挙が根づけば根づくほど地方に地盤を持つ保守勢力やイスラーム勢力の影響が高まる、というのは目新しさに欠ける印象でした。