本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

日米安保と自衛隊

 

本書は2015年刊行、2015年といえば安倍政権下で安保法制に対する憲法論議が最高潮に達し、違憲、護憲を訴える憲法学者や専門家の本が書店を彩っていた時期である。

私は本書に中立的な議論を期待していた。しかし、その期待は叶わなかった。「核なき世界」「東アジア共同体」「九条」「専守防衛」など、岩波書店色の強いワードが目次からも読み取れるが、私は隣国ロシアが国際法に反してウクライナへ侵攻し、北朝鮮の飛翔物発射を知らせるアラートが頻繁に届く2024年の現在でも執筆者達が意見を変えていないのだろうかと疑問である。特に、第9章(前田哲男)の、『三酔人経綸問答』の洋学紳士君を彷彿とさせる以下の意見は鼻で笑ってしまった。

日本がそのような意思表明(注・「目に見える専守防衛」を指すと思われる)をおこなうなら、鮮烈な「信頼醸成装置」のシグナルを近隣諸国に発したことになる。それにより東アジア軍縮機運の誘い水効果が期待できよう。