本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

中東政治入門

 

初学者に適した最良の入門書である。各章のはじめに「なぜ○○なのか?」と問いを提示する点、その問いに対する解説が丁寧な点、最後に章のまとめがある点、いずれをとっても良心的で親切だ。

第1章 国家 なぜ中東諸国は生まれたのか

  • 植民地国家としての経験と独立が共通点である。
  • 人工性の濃淡によりそれぞれの中東諸国の姿がある。

第2章 独裁 なぜ民主化が進まないのか

  • 権威主義体制は、体制側にとって合理的な戦略である。

第3章 紛争 なぜ戦争や内戦が起こるのか

  • 戦争は起こりにくくなっているが、内戦の件数は増えている。
  • 宗教や民族よりも経済発展のレベルの影響が大きい。

第4章 石油 なぜ経済発展がうまくいかないのか

  • 産油国は国家が石油生産を独占し富を国民に分配してきたが、それが権威主義体制の維持と『石油の呪い』を生んだ。
  • 産油国社会主義的な再分配や福祉の充実を過度に重視し、やがて行き詰まった。

第5章 宗教 なぜ世俗化が進まないのか

  • イスラームを理由とする見方には説得力がない。
  • 宗派対立が政治を動かすのではなく、政治が宗派対立を生む。
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