きっかけ
もともとは、10年ほど前に「おれ、法学部を出たのに憲法のこと全然わかってねえな」と気づいて、入門書を求めて購入したものです。
今回は、ここのところ歴史や政治の本が続いていたので、ちょっと毛色の違う本で気分転換を図ろうと思って再読しました。
著者は?
- 渋谷秀樹
- 1955年兵庫県加古川市生まれ。1984年、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。
- 大阪府立大学経済学部教授、明治学院大学法学部教授、立教大学法学部教授を経て、2004年より立教大学大学院法務研究科教授。
どんな本?
「はじめに」より
- 憲法の基本的な思想と論理を知ることを目的に書かれています。
感想
Q&A形式での解説は、初心者がとっつきやすく、成功していると思います。ただ、その解説の内容はやや難解です。言い回しや用語が素人にはハードルが高い。例えば、
メモ
- 立憲主義(Constitutionalism)は、「個人の自由」が人間社会において一番大切な価値であると考える
- 真の意味での憲法とは、人々の権利や自由の保障と、権力分立の思想が備わったものを指す。
- 現行憲法で定められている国民の義務は、すべて国民の自由・権利の実現や保護に直接還元されるもので、国民に本当の意味での法的義務を課している規定ではない。
- 立憲主義的憲法は、政府に対して義務を課す制限規範としての特質を最も強く意識して構想された。
- 「法の支配」の原理のエッセンスは、統治者を法によって拘束し、被治者の権利・自由を守ることにある。
- 憲法は誰を支配し、誰が守らなくてはならないものか。それは、統治活動にあたる者である。
- 「国民主権の原理」は、憲法の一番根本にある規範だから、憲法内部の論理では変更不可能である。したがって、憲法改正手続きによって国民主権を天皇主権に変えることはできない。
- 「八月革命説」とは、当時の主権者である天皇の意思で、ポツダム宣言受諾に含まれる国民主権の原理を受け入れたのだから、その時点で主権の所在の変更という「革命」があったと見る、憲法学者宮沢俊義の説である。
- 社会契約説の論理では、国家の領域に暮らす人々=国民となる。一方、国民国家の論理では、血統主義にもとづく国籍保有者=国民となる。これに対し憲法上の国民は、国籍保有者に加えて、政府の統治権の及ぶ空間内に生活の本拠を有する者と解すべきである。
- 立憲主義的憲法が想定する個人は、合理的で科学的精神をもった人間だった。しかし、社会の変化により、「強い私人」と「弱い私人」が存在するようになった。
- 人権規定を私人と私人との関係に及ぼしていけるのか。この問題に関連して、三菱樹脂事件で最高裁はこう判示した。①自由権とは、政府の統治活動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的のものであって、私人相互の間を直接規律することを予定するものではない。②しかし、私的な支配関係で、個人の基本的な自由や平等が侵害されたり、そのおそれがあり、しかもそれが社会的許容限度を超えるときには、次の2つの方法で対応すべきである。ひとつは、立法措置を講じて対応する方法。例えば、雇用関係に対応する労働契約法など。もう一つは、民法などの条文に憲法の趣旨を取り込んだ解釈を施して対応する方法。具体的には、民法1条、民法90条、民法709条。
- 人権規定をストレートに私人間に適用すると、私的自治原則が侵害されるおそれがある。
- 政府と私人の決定的な違いは、政府は人権の享有主体ではありえないという点である。