きっかけ
私は法学部法律学科に入学するも、成績は散々でした。憲法も例外ではありません。1回生の春学期に受講した、基本的人権を扱う憲法Ⅰはぎりぎり合格しました。しかし、統治や三権分立を扱うⅡは悲惨で、講義の内容に興味がわかず、気が付けばいつも居眠り。確か40点くらい。そう、私は法学部を卒業しながら、憲法の単位を満足に取得できなかった、とんでもない落ちこぼれなのです。たとえて言うなら、リフティングのできないサッカー部員みたいなものでしょうか?
そんな落ちこぼれの私ですが、しかし、基本的人権の講義で聞いた判例の内容だけは、部分的に、かすかに、記憶に残っています。ヒゲの先生のお話が上手だったからなのか、当時はまだ記憶力の余韻があったからなのか、あるいは1回生の春学期でまだ私に学習意欲が漲っていたからなのか。
それはさておき、実際、判例は面白い。なぜなら、そこには生身の人間の怒りや苦しみや葛藤を感じることができるからです。
感想
- この小さな本に、なんと223もの判例が収録されています。この量と質に私は大変驚きました。1回生の時に、こんな本が欲しかった。いっそ、法律学科全員に配ってほしかった。今の学生は幸せだなぁ。そんなことを思いました。
- しかし、一つ一つをじっくり読んでみると、物足りなさを感じました。判例を読む際には、裁判所がなぜそのように判断したかを理解することが大切です。したがって、判決文を丹念にたどることが必要不可欠です。しかし、本書では文字数の都合上、判決文自体がぎゅっと短縮されています。これだと、憲法学の素人である私は、文章を読んでも思考過程が飛び飛びの歯抜けになってしまい、裁判所の理屈を腹落ちさせることができません。それゆえ、私には物足りなさが残るわけです。