本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

白鳥とコウモリ

 

白鳥とコウモリ

白鳥とコウモリ

  • 作者:東野 圭吾
  • 発売日: 2021/04/07
  • メディア: 単行本
 

感想

  • 東京の門前仲町に愛知県の安城市と、私が景色を思い浮かべることのできる土地が登場することに、少なからず興奮しています。以前にも江東区木場で女性が殺されるお話があったし、東野圭吾氏はこの辺りにお住まいなのでしょうかね。一方の安城は、デンソーの事業所や工場がたくさんある街。三河弁がちらちら出てくるのも、三河出身の私にはポイント高いです。
  • 刑事モノですが、近年の作品のように軽薄な感じでもなければ、白夜行のように重苦しくもなく。ひとつ謎が明らかになったかと思うとまた別の謎が立ちはだかり、私をグイグイと物語に引き込みます。
  • 14まで読みましたが、全然先が読めません。『白鳥とコウモリ』という書名も、なんのことやらサッパリです。
  • 物凄い勢いで読み進めています。ここまで長時間、夢中にさせてくれた東野圭吾は久しぶりです。
  • 加害者側、被害者側、警察に弁護士と、登場人物が次々に出てきて、ちょっと頭の整理が追いつきません。あからさまに怪しい人物もいますが、ここからさらにひねりを加えてくるのが東野圭吾。これまでの作品ですと、実はこの人が犯人と血の繋がった親子でしたとか、彼と彼女は異母兄弟でしたといった驚きを仕込んでいましたが、さて今作はどうか?
  • 三河弁の一つ、「〜だら。」が出てきて、思わずプッと吹き出してしまいました。地元を離れて長い私にとって、三河弁は自分のネイティブ言語でなくなっているのかもしれません。
  • 読み切った。一気だった。あぁ、意外な犯人はそのパターンか…なるほど。
  • 犯人の嘘を覆す過程が鮮やかで、読んでいて快感を覚えるほどです。
  • 終盤の押しが少し弱かったかな、という印象です。犯人の過去や、殺人を決意するまでの過程をもっとじっくり描いて、犯人に対する共感を覚えてしまうくらいの物語が欲しかった。
  • 被害者を「こんなやつ、殺されて当然」と思わせるのが上手いですね、東野圭吾は。灰谷のクズっぷり、流石です。
  • 1984年と現代の両方を舞台にしたところから、『白夜行』のような重厚な物語も期待しましたが、そこまでのものではありませんでした。
  • 面白かったけど、どこか物足りないと感じました。その理由は、容疑者と直接対峙する場面がないせいかもしれません。本作では弁護士が代わりに容疑者と接見することで話が進んでいくのですが、間接的でもどかしい上に、一方の弁護士が何か企んでるのではないかと思わせるほどに腰の引けた野郎で、後半はストレスでしかありませんでした。
  • 本書に限らず、本を読んでいていつも感心しつつ疑問に思うことがあります。それは、遠い昔に誰がなんて言ったかをよく覚えていられるなぁということです。人を殺した場面ならともかく、何十年も前の、職場の同僚や近所の人との何気ない会話を、ほんの5分前の出来事のように思い出して再現してみせるなどという芸当は、私にはできません。あるいは私が記憶の正確性にこだわって躊躇しまうだけなのでしょうか…。
  • 「白鳥とコウモリ」というフレーズは、作中に確か一度出てきたきりだと記憶しています。(P. 391「光と影、昼と夜、まるで白鳥とコウモリが一緒に空を飛ぼうって話だ」)しかし、この比喩が私にはいまいちピンときませんでした。本作において、加害者側の家族と被害者側の家族とが全く対照的であるとは描かれていないからです。