感想
はからずも、近年のウイグル人問題を初めて具体的に理解することになったのが、最大の収穫である。まさか貧乏旅行記が国際問題の理解の端緒になるとは。
本書に現れる中国政府によるウイグル人弾圧は、例えば、
- 居住区の出入り口を制限し、つど身分証明書の提示を求める。
- 数百メートルおきに公安を配置する。
- 商店に金属柵を設置させる。
- 国境の検問所を七重にも設置し、検問のたびにしつこく徹底的に検査・尋問する。
このような行為は、ただちにウイグル族の人々の命を奪うものではない。しかし、これらの施策を通じて日常的にストレスを与え続ける。本で読むだけでも疲労するのに、毎日がこれではさぞ生き辛いだろう。
そして、私はこの後ウイグル族に対する中国政府の残虐な政策を具体的に知ることになる。国家が一部の国民の抹殺を図るなどということが、21世紀に、隣の国で行われている。そのことに全く無関心であったことを、私は恥じている。
2022/11/18 追記
東京→宮崎出張の暇つぶしにと、リュックのポケットに突っ込んだ。本書を選んだ理由は何だろう。ここ2ヶ月の中央アジア史の学習のおかげで、本書の旅のルートや民族の由来などがより明瞭に理解できる…ような気がしたからだろうか。
果たして、結果は私の淡い期待のとおりであった。カシュガル、ブハラ、タシケントといったウイグル人の築いた都市名が、地理的・歴史的なイメージとともに蘇ってくるのだ。そして、著者がウイグル人に対しては温かい眼差しを送るのに対し、漢民族の高圧的で強引な管理思想にうんざりしているのにも、以前より強く共感を覚えた。
約3ヶ月ぶりの再読は、読書が読書の満足度を高めるというごく当たり前の真理に気づくきっかけとなった。