本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

タリバン台頭

 

感想

  • 私は、カルザイ大統領がアフガニスタンを導く稀有なリーダーだと認識していました。2012年にカルザイ大統領とタリバン代表の両者が同志社大学で云々という解説を斜め読みして、母校とともにカルザイ大統領を誇らしく思ったくらいです。
  • しかし、本書を読んでそれはぐるりと150度くらい回転しました。カルザイ大統領は国内に影響力を持たず、欧米からは知識人だが使いやすく弱い人物と見做されていたというのです。
  • のみならず、カルザイ政権では汚職が深刻化して国民と政治エリートとの溝が深まったとのこと。これがターリバーンの台頭を促したというのですから、私は自分の歴史認識は何だったのかと唖然としました。
  • アフガニスタンは、保守的な男性優位の部族社会。支配民族たるパシュトゥン族の伝統を理解する必要があるとのことですが、欧米の支配的な価値観とは乖離があるので、理解を得ることは困難だろうと思います。
  • 国際社会はターリバーンを政府として認められない、しかし人道支援は続けなければならないジレンマを抱えているとの指摘に、なるほどと考え込んでしまいました。
  • ターリバーンに代わる統治主体が見当たらず、またターリバーンを完全に排除することも不可能との指摘も響きました。
  • 本書により、カルザイ=善、ターリバーン=悪という単純の善悪二元論から身体半分くらい抜け出せたように感じています。