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内陸アジア史の展開

高校世界史で、西欧と中国はひと通り習った。イスラーム世界も、ここ2年くらいの濫読でわかったつもりになってきた。最近気になるのは、それらに挟まれた地域である中央アジア(内陸アジア、中央ユーラシアなど呼称と対象地域は多様)。読書を通じて、なんとなく輪郭がはっきりしてくる。この感じ、「解像度が上がる」というやつだな。ゼノブレイド3で探索して、未開拓地域か明らかになるのと同じ感覚である。
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内陸アジアには、3つの文化基層があるという。①トルコ文化、②イスラーム、③チベット仏教の3つである。

①ほんらい遊牧民族であったりトルコ系の人びとが、中国文明・漢文化の影響や、牧地が狭くなったこと、簡単な耕作を始めたこと、近くに都市・農村があったこと、識字能力があったことを背景に、9世紀以降、定着農耕・都市文明の担い手になっていった。オアシス諸文明と接触し、外来の文明を取り込んで自ら変容を遂げた。

②サーマーン朝は中央アジア最初のイスラーム政権で、草原の遊牧トルコ人マムルーク軍団として組織した。カラハン朝は、トルコ人へのイスラーム導入の祖といわれ、サマルカンドを拠点とした。

元朝では色目人(アラブ人、ペルシア人トルコ人)を重用し、宗教・民族の多元性を実現した。

③仏教は吐蕃のソンツェン=ガンポが受容して以来、チベットおよびモンゴル人の間で信仰されているという。清朝崩壊時にチベットは独立の機会を逃し、中華人民共和国成立以後は人民解放軍が進駐。

良かったのは、私の認識を改められたこと。チベットは中国の一部という認識だったので、内陸アジア史にチベットが登場するのには、当初違和感を覚えた。しかし、チベットウイグルと同じく固有の歴史や言語やアイデンティティを持つ民族である。中華史観をこの機会に改めることができたと言える。

引き続き、内陸アジア史をきちんと理解していきたい。その上で下川裕治の紀行本を読み直すと、初回とは異なる楽しみ方ができるかも知れないと期待し始めている。