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歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

新書イスラームの世界史①②③


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イスラーム史の入門書として、定番中の定番。何年も前から読みたくてたまらなかったのですが、30年前の新書を定価で買うのは躊躇うし、かといって古本も安くないしで、だらだらと時間だけが過ぎていました。

それが、メルカリでなんと3冊800円の超お得価格、しかも美品を購入することができました。出品者の方には本当に感謝です。

さて本についての感想。

まず執筆者の顔ぶれが圧倒的。鈴木董、佐藤次高、坂本勉をはじめ、イスラーム界隈の一流どころ、オールスターがズラッと並ぶところに、執筆者と出版社、双方の本気を感じます。

内容の深さと難易度は、世界史Bの教科書と専門書の中間くらいでしょうか。これだけの一流の専門家を揃えながら、それぞれが専門領域への深入りを自重しているところが良いです。世界史が大好きだった高校生のときに出会いたかった。

特に、私はかねてより「どうしてオスマン帝国という大国が崩壊に至ったのか」という問いをずっと抱いています。これに対する見解として、鈴木董先生は「経済音痴」を挙げていて、それはなるほど言い得て妙。

ただ、歴史的な事実の記述ばかりに終止して、「なぜそうしたのか(動機)」「どうしてこうなったのか(経緯)」の説明がない箇所も少なくありません。「えっ、なんで?」と身体が前のめりになってしまうのですね。その点が、因果関係を分析する国際政治との違いかなと思います。

本書の刊行は1993年。ちょうど30年前です。この30年間にイスラーム世界でどれほどの巨大な変動がわき起こったかは、私が挙げるまでもありません。30年の歴史の歩みと、この間の歴史学政治学の発展をアップデートした、増補版あるいは改版を誰かが書いてくれたらなと期待せずにはいられません。