本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

十角館の殺人

 

 

えーっ!!と驚くあの体験ができる本はないかなぁと考えながら書店に入り、目についた。136万部。帯にでかでかと書かれた宣伝文句にも惹かれた。買うことは前から決めていて、あとはいつどこでお金を払うかだけ。大胆不敵なおれはその決断に2ヶ月かけた。意を決して丸の内オアゾ丸善、3階にエスカレーターで上がる。レジで金額を見て目を丸くした。946円。500ページの文庫本が946円もする時代になってしまったか。 胃がしくしくと泣くのを感じつつSuicaで決済し、4階のカフェの窓際席で檸檬サワーを注文すると、私は東京駅を背景に読み始めた。f:id:bookrecords:20231024081822j:image

いや、こう見えても、小4の頃から東野圭吾金田一少年の事件簿で、古今東西何百というトリックを見てきたおれだ。ようし、驚愕の結末とやらを見抜いてやろうじゃないか。真相に辿り着いたことなど一度もないがな。

おれは意気込んだ。ふむ、大学のミス研のメンバーが、九州の孤島に集まるとな。おれの頭の中にはオペラ座館の殺人の絵が浮かぶ。しかし推理云々の前に、文章がまるで脚本のように淡白でなかなか感情移入できない。登場人物がカタカナなのも、とっつきを悪くした。楽しくない読書は続かない。おれは次第に読むのが苦しくなった。しかし、せっかく946円も支払ったのに、30分と読まずに捨てるのももったいない。読書の楽しみを半減させる行為と自覚しつつ、おれはページを飛ばすようになった。

そんなおれが予想したどんでん返しはこれだ。といっても、そもそも飛ばし読みしているくらいたから、肝心なところもかなりスキップしたはずで、予想に根拠はない、ただのヤマカン。そして見事に外れたw

  • 建物が十角ではなく実際には十一角で、部屋が一つ多い。心理トリック。
  • 実際には『私』というもう一人の登場人物がいる。でもこれだと『ある閉ざされた雪の山荘で』と同じ筋書きになってしまう。

感想

  • 復讐のために、6人全員が殺された上に、建物ごと焼かれるという残酷で救いのない殺人事件である。一昔前の金田一なら、読者の同情を誘う動機が語られるところだが、それもなく、淡々と話が進むのが若干拍子抜けである。
  • 孤島と思わせておいて、実は犯人が本土と島の間を往復していました、という真相はちょっとアンフェアでは?