本・ゲ・旅

歴史や政治を中心に本の要約を紹介します。たまにゲームレビューも。

ウクライナ戦争とヨーロッパ

 

確か2023年8月に刊行予定だった本書は、なぜか発売が遅れに遅れたが、その原因が細谷雄一のせいであることがあとがきで判明した。というか、やっぱりという感じだ。このため各論文の内容の一部に数ヶ月分のギャップ、鮮度の低下を感じる。現在進行形の事象を扱う書籍で4ヶ月の遅れはいかん。

さて内容であるが、これはヨーロッパ各国がウクライナ戦争にどう関与し、あるいはどう受け止めてきたかを整理するものである。特に面白かったのは、ロシア政府の政策・プロパガンダの成功により、ロシア国民に無関心層が少なくないこと(廣瀬陽子)、中・東欧でも歴史・政治・経済によってロシアをどの程度驚異とみなすかに差異があること(広瀬佳一)。

いずれの専門家もこの戦争の長期化を予想しており、容易な解決策が提示されない点が、国際政治の複雑さをまざまざと物語っている。