どんな本?
- 高坂氏の死後に公刊された本です。
- 講演の記録が主で、論文集とは少し趣が異なります。
- 高坂氏の「洒脱な語り口」を味わうことができます。
- 氏が、結果的にソ連の行く末を完全に読み間違えたことがわかります。
著者は?
Good point
- だ・である調の論文とは異なり、ジョークや皮肉、個人的な経験や 好き嫌いなどが随所に現れていて、高坂氏の人柄に触れることができます。その点で、本書は他の新潮選書と一線を画す存在です。
- いわゆる口述筆記なので、説明が易しくくだけた印象があります。 国際政治を専門としない人にも、高坂氏を知る第一歩としておすすめできます。
- 講演においても、人間や文明に対する鋭い洞察が続出することから 、氏は評論を書く時だけでなく、日頃からそういった視点で出来事を観察し思考しているのだと理解しました。 自分には到底まねできないことであり、人並外れた思考水準の高さを実感しました。
私見・疑問等
- 読みやすさ、わかりやすさの一方で、評論の質、すなわち根拠と説得力に関しては物足りなさを感じます。
- 当時の高坂氏はイギリスを「奇麗に年を取った方」と好意的に評価していますが、もし氏が存命ならば、Brexitに揺れる現在のイギリスをどう評するのか、大変興味があります。
メモ
- 人間は予感することができる存在であると、私は思う。
- どの社会も文明も基本的原理のようなものを持っており、それが人間の営みと社会の体質とを決める。
- 第二次世界大戦において、精神と技術の両面で日本は敗れた。
- 貴族の責務を伴ったリーダーが大英帝国を支えてきた。
- イギリスの文明には貴族主義的、寡頭制的な性格がある。
- 文明の素質が、ある歴史の段階においてはプラスに作用する。けれども、状況が変わることによって、それがマイナスになり始めたとき、その文明の寿命が次第に終わりに近づく。
- どこかで大きな対立がなくなれば、あちこちに小さな対立が現れてちょうど埋め合わせをするようになる。
- 私の知る限り、どんな国際政治の体系でも、出来て40年以上はもたない。
- 日本人は、政治に関しては基本的にお人好しです。
- 何よりも恐ろしいのは、事件後何もやっていないと平気で白々と言うわけです。あれを見て、中国はやはり恐ろしいと思いました。
- 力を持つ二つの国が並んで存在してうまくいったケースは歴史上余り例がないのです。
- 中国という国はおかしな国です。外に出た連中は能力があって能力を活かすのに、内にいると無駄なことに力を使う。
- 中国とソ連の決定的な違いは、知識人の扱い方です。