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【2020/11/30更新】リングフィットアドベンチャー

 

リングフィット アドベンチャー -Switch

リングフィット アドベンチャー -Switch

  • 発売日: 2019/10/18
  • メディア: Video Game
 

きっかけ

ガッキーのCMを見た妻が、よくわかんないけど面白そうという理由でJoshinの抽選に応募したところ、なんと見事に当ててしまいました。品薄が続いていることは知っていましたので、当たった事自体に驚き、「すごいじゃん、おめでとう」と思わずお祝いのコメントが口から出ました。

しかし、それまで私はこのゲームにまったく興味がありませんでした。理由は、私が運動音痴だからです。ことスポーツに関しては、何をしても人よりできず、苦い思い出ばかりの私。マラソン大会では下から5番以内、跳び箱は5段までしか飛べず、逆上がりができるようになったのは中学2年。そんな私ですから、リングフィットアドベンチャーでも痛々しい結果になるだろうことは目に見えています。いかにゲームとはいえ、妻と子どもの前で醜態を晒すのが私はいやだったのです。

しかし、結果的に私の心配は杞憂に終わりました。それどころか、このゲームは私に大変なメリットをもたらしてくれたのです。

メリット

このゲームが私にもたらしてくれたメリット。それは、娘との関係改善でした。

ここ最近の数ヶ月、5歳の娘は、なぜか私に冷たく当たっていました。思い出す限りで挙げてみても、

  • 朝一番に「おはよう」と声をかけると、わざと顔をそむけて無視する
  • 身体に触れると、露骨に「パッパ嫌い」といやがる
  • 軽く注意しただけで蹴ってくる
  • 幼稚園に迎えに行くとニヤニヤしながら「パッパ嫌い」と言って蹴ってくる
  • 時々お風呂で「パッパいや!」「助けて!」「あっち行って!」と泣きじゃくる(誤解されるからやめてくれ)

という感じです。

もちろん私はいい気持ちではありませんでした。寂しくもありました。しかし、これは成長過程の一時的な変化なんだろうと自分に言い聞かせ、過剰反応しないように努めていました。

そんな時期に、リングフィットアドベンチャーがやってきたのです。

やってみると、私以上に娘たちがドハマリしました。私がゲームに合わせてスクワットなどをしていると、「パッパがんばって!」「早く!」と応援してくれるのです。物真似が好きな彼女たちは、ゲームのボイスを覚えて「スワイショウ!」「焦らずに立ち上がろう!」「ビクトリー!」などと楽しそうに叫んでいます。そのうち、娘たちが私のために冷水を用意してくれるようになりました。

「パッパ、休憩のときに飲んでね」

「ありがとう・・・(涙)」

「パッパ嫌い」を連呼していた娘とは信じられません。中の人が誰かと入れ替わったのでしょうか。

私はその思いを胸に、運動負荷を上げていっそう筋トレに励んでいます。

思いがけず手に入れたリングフィットアドベンチャーが、思いがけず私と娘たちの関係を好転してくれました。それだけでもこのゲームには大変な価値があります。

運動音痴が頑張れる理由

このゲーム、本当に良くできているなと感心しきりです。なぜなら、真性の運動音痴かつずぼらな私が、20日以上も継続できているからです。

では、何が良くできているのか?

私が思うのは次の3点です。

  1. 褒めちぎってくれる
  2. 成果が数字でわかる
  3. 変化がある

運動音痴は、運動で褒められた経験がありません。しかし、このゲームではめちゃくちゃに褒めてもらえます。

「すごいね!」

「パーフェクト!」

「汗が輝いてるよ!」

といった調子の良い言葉を連発して、私の気分を上げてくれるのです。褒められ耐性ゼロの私は、これだけでも「よぉし!」と頑張れます。f:id:bookrecords:20200809205909j:image

ステージを進めると、中腰の姿勢(いわゆる空気イス)で何十秒もキープするなど、運動もだんだん過酷になってきます。

「くっ…!これキツい…!」

苦悶する私。1秒が、3秒にも5秒にも感じられます。そんなときも、ゲームが励ましてくれます。

「頑張って!」

こうして苦行に耐えている私は、褒めることの効用ってめちゃくちゃデカいなと再認識しました。同時に、できないことに対して、感情的に怒ったり、けなしたり、無視したりしても何にもならないことにも気づきました。褒めることって、運動に限らず、仕事でも、子育てでも、どんな場面でもできることです。私は少しずつですが、実践を心がけるようになりました。

次に、成果が数字で現れる点について。

リングフィットアドベンチャーは、自分が頑張った運動のすべてを数字で表してくれます。スクワット○回、走行距離△km、消費カロリー□kcal…などなど。しかもそれが積み重なって記録されていきます。20日続ければ、その数字もそれなりの厚みが出ます。


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運動音痴には、これがまためちゃくちゃ嬉しいし、励みになります。なぜなら、数字に厚みが出るほど継続して運動に取り組んだ経験がないからです。

「おれでもやればできるじゃん、頑張ったなぁおれ!」

そう自画自賛すること必至。そして数字がそのまま次へのモチベーションとなります。

努力を数字で表すことの効用を、私は実感しました。
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最後に、変化について。私が筋トレや運動を継続できない理由の一つに、同じことの繰り返しで飽きる、ということがあります。例えば、プランクは床をじっと見つめるばかりだし、ジョギングにしても見慣れた近所を走るだけ。そんなことを繰り返すうちに、退屈でいやになってしまうのです。

しかし、そこはゲーム、そして任天堂の面目躍如。運動にゲーム性をもたせ、プレイヤーを飽きさせないように工夫を凝らしています。具体的には、スキルに色による相性をもたせたり、攻撃力が高いスキルはそのかわりに攻撃範囲が狭かったり、トレーニングウェアを着替えることで能力を高めて運動を楽にしたり、効果の異なるスムージーを飲み分けることでバトルを早く終わらせたり。
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特筆すべきは、それらは複雑さが排除されていて、すっきりシンプルということです。近年のゲームは、やりこみ要素の名のもとに複雑さを増す一方で、私は全然ついていけていません。リングフィットアドベンチャーでも、やりこみ要素を増やそうと思えばいくらでも盛れます。そこを、おそらくは引き算の発想で削ぎ落としつつもこの完成度に仕上げてきた任天堂の潔さはさすがです。ゲーム開発歴40年の経験値のなせる技かもしれません。f:id:bookrecords:20200805200622j:image

不満点

しかし、私の生活と親子関係を変えた傑作にも、不満点はあります。

それは、リングコンとレッグバンドの認識精度です。

このゲームには、プレイヤーの運動を点数化し、平均点で評価するミニゲームがあります。例えば、私がスクワットを30回するとしましょう。私は毎回同じようにスクワットをしているつもりです。それなのに、なぜか時々100点ではなく97点だったり95点だったり、時には80点台だったりします。不満なのは、なぜ100点でないのかが、その場でも後からでもわかるようになっていない点です。屈み方が甘かったとか、立つのが早かったとか、具体的に教えてくれれば、悪いところを直して次からより正しい運動ができます。しかし、それがわからないままに評価だけ落とされるのです。これでは、せっかくのモチベーションがだだ下がり。実際、私はしばしばテレビに向かって「は?なんで?」「腹立つ」などと苛立っています。
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思えば「インタラクティブ」こそ、宮本茂さんが金科玉条のごとく掲げてきた、ゲームの醍醐味、中毒性の源泉であったはずです。しかし、よりによってリングフィットアドベンチャーという身体を動かして遊ぶゲームで、動いたとおりにキャラクターが動かないというのは、致命的な欠陥ではないでしょうか。

ゲーム自体がとても面白いだけに、「ちゃんとやってるのに反映されない」というのは、残念としか言いようのない仕様です。

フィットネスマスタクリア後の感想
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  • 正直、運動ぎらいの自分がここまでやれるとは思いませんでした。約140日間、ほぼ毎日頑張った自分を、まずは褒めたいです。よく頑張って続けたね!
  • ここまで続けられた理由は、数ヶ月前に「運動音痴が頑張れる理由」で書いたとおりです。一言で言えば、リングフィットアドベンチャーだから頑張れた。これに尽きます。
  • 途中からだんだん負荷を上げていって、最終的にMAXの30にしました。スワイショウやアームツイストのような、これラク過ぎない?どこがトレーニングなの?と高を括っていたスキルも、60回やると結構しんどかったです。調子乗ってましたごめんなさい、と反省しました。
  • 100時間もやっていると、同じことの繰り返しにどうしても退屈します。私の場合、これはゲームじゃなくてトレーニングだ、これ以上は求め過ぎだしょうがない、と割り切るように努めました。

ミニゲーム

  • フィットネスマスタをクリアしてしまうと、アドベンチャーモードが急に味気ないものに感じられます。スキルとウェアと素材とスムージーはコンプリート。あとは全ワールド100%にするだけ。…なのですが、それはトレーニングではなくただの作業、どうもやる気が湧いてこないのです。
  • そこで、今までずっとスルーし続けてきたミニゲームを試したところ、これが筋肉に効く!アドベンチャーモードを真剣にやっても、翌日に筋肉痛になることはまれでしたが、これなら確実に筋肉痛です。
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  • 20秒間で何回できるか、あるいはエンドレスで何回続けられるか。もはや目の前には敵もドラゴもいません。いるのは、自分。正真正銘、自分との戦い!
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  • 「せめてAまで頑張ろう」「めざせ100回」数字で見える化された私の筋力が私のチャレンジ意欲を掻き立てます。運動に対して、前向きな情熱を燃やす私。リングフィットアドベンチャーをプレーする前とはまるで別人です。
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開発者インタビュー

https://s.famitsu.com/news/202009/04205252.html

https://topics.nintendo.co.jp/article/e115dc48-07de-4a31-aed1-ad65b3cbeb64

開発スタッフに聞く『リングフィット アドベンチャー』 | トピックス | Nintendo